ゆっくりな生活

ーこの子の成長は、ほんとうにゆーっくり、ゆっくりですからね。

僕たちの次女が生まれてから約1週間後、入院していた病院の小児科部長は、NICUの奥の面談室で穏やかにそう語りました。
「ひぃ」(本名ではありませんが、このブログではこの呼び名で統一します)は、出産の翌朝にその病院に救急車で運ばれました。「遷延性肺高血圧症」という病名で、チアノーゼの症状も出ていて、本当に危険な状態だったようです。救急車を追いかけてNICUで再会した時は、保育器の透明なケースの中でいくつものチューブにつながれていて、僕は半ば呆然としながら担当の若い医師の説明を受けました。
その時、「ほぼ間違いなく、この子はダウン症です」と告げられたのです。

あれからもうすぐ1年になろうとしています。最近、急に「ダウン症」という言葉をメディアでよく見かけるようになりました。そのたびに、否応無く目を惹きつけられるのですが、どちらかと言えば気分が滅入ることの方が多いようです。
先日も、奥山佳恵さんがダウン症の次男を通常学級に入れることに決めた、とのニュースが流れましたが、ネット上のコメント欄は大荒れで、読みながら言葉が体に突き刺さってくるような感覚を覚えました。

目をiPhoneから上げると、カーペットの上で両手をついてこちらを見つめていた「ひぃ」と目が合います。すると、「ひぃ」はニッコリと顔全体に笑顔を浮かべて足をばたつかせます。僕も相好を崩して「ひぃちゃん!」と言いながら両手で我が子を抱え上げます。
ーそう、「ダウン症」という言葉の持つネガティブなイメージとは裏腹に、僕たちは本当に幸せな日々を送っているのです。ひぃはいろんな経験や出会いを私たちに与え続けてくれています。この小さな身体がこんなにも周りを動かす大きな力を持っているということに、驚きと感動を禁じ得ない毎日です。長女の「すぅ」とともに、一人の「家族」としてかけがえのない存在なのです。
このブログでは、そんな僕たち家族の「ゆっくり」とした生活や、日々思うことなどを、妻とともに気楽な気持ちで綴っていけたらと思います。

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